メシアンとフォーレ

この秋冬は、メシアンとフォーレの歌曲を演奏する機会があった。
なんとなく備忘録です。

メシアン《ミのための詩 第1巻》より 1.感謝の祈り 2.風景 3.家 
2024.10.14 京都フランス歌曲協会設立30周年記念コンサート 柚木たまみ(sop) 辻ゆり子(pf)

フォーレ 《優しき歌》《閉ざされた庭》 
2024.12.1 ソワレの会 フォーレ・マラソンvol2,3 北村多恵(sop) 辻ゆり子(pf)

《ミのための詩 》の「ミ」は、メシアンの最初の妻クレール・デルボス(Claire Delbos 1906-1959)の愛称です。愛の歌ですが、甘さが微塵も感じられない。ある種宗教的な高揚感がある、日本人の感覚からすると「怖い」曲です。共感できません。どうやって演奏するのかと戸惑いました。

コンサートは京都アルティであったので、箱が助けてくれました。GPでようやくつかめたと思います。「感謝の祈り」というのは、ミクロからマクロへと転ずる宇宙的なアイデアを音楽に具現化したものかもしれない。音楽を通してこういった特別な感覚を経験できるのはほんとうに不思議。


フォーレについて。
《優しき歌》はヴェルレーヌが新婚の妻マチルダに送ったこの上なく優しさと愛にあふれた詩にフォーレが曲をつけた歌曲集。3期のフォーレの複雑な書法と迸るエネルギーに吹き飛ばされそうになります。フォーレが静かと思いこんでいる人はこの曲を演奏してみたらいいです。

ソワレの会では随分いろんな歌曲を勉強させてもらってきました。この会のコンセプトはディレクターの益子明美先生に言わせると 「音楽を学ぶ」trial and errorの会です。《優しき歌》はなんどか演奏機会がありましたが、めっちゃ難しいので「勉強」になってたと思う。今回は「演奏」をお客様に聴いていただくようにしたかった。そう聴こえていたらいいのだけど。

もうひとつ《閉ざされた庭》はフォーレ4期の歌曲集です。簡素な書法は、日本の茶室のわびさびの世界です。

夏ごろから北村多恵さんと2度ほど合わせることができ、半年かかって見えてきたのは「光」。感性を柔らかくしてほんの小さな変化を追っていくと、「光」が手の中から音になってくる。このとてつもなく研ぎ澄まされた美的感覚が経験できたのも大きい。

メシアンとフォーレ、広大な宇宙から内省する心の中まで、旅するように音楽ができて楽しかったな。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です